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passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.86

「……実は、わたしの方が先だったかもしれないんだ。」
「なにが?」
「「好き」になっていたの…」
「どうしてそう思うの?」
「初めて会った日の顔合わせ会の最中、空斗くんホールの窓から空を眺めていたでしょ?」
「そうかもしれない…でも、なんで知ってるの?」
「わたし途中トイレに行ったんだ。その帰りに帽子を被った白い制服の人が空を眺めていたから。」
「間違いなくおれだ」

彼は薄っすらと笑った。
「その時から気になっていたんだ……」
「え?だっておれ、ただ空を眺めていただけだよ」
「うん。そうなんだけど、でも、空斗くんの背中に惹かれていた気がするの。自分でもなんでだかわからないんだけど。」
「そんなこと言われると…おれすごく恥ずかしいよ」
「だって、本当なんだもん。空斗くんはあの時なにを考えながら空を見ていたの?」
「あの時は…空を見ていたんだ。ただそれだけしか考えていなかったと思う」
「空斗くんらしいね。」
わたしと空斗くんは少しの間、微笑み合っていた。
「ねえ、今までずっと言えなかったこと、言ってもいいかな?」
「うん、いいよ。」
「可愛い」
「えっ……」
「のぞみさんのそういう少し照れてるところとか、恥ずかしそうにしてる仕草がすごく可愛いなってずっと感じてたんだ」
わたし、心臓止まっちゃうよ。
「そんな…わたし、わたし可愛くないよ!」
「希さんが自分のことをどう思っていても、おれは希さんのことを世界で一番可愛いって思っているよ」
「……ありがとう。」
「自分の体重を素直に言った時の希さんも、本当にすごく可愛かったな……」
「ねえ、それはダメ!恥ずかしいからわたしの体重の話しないで…ちゃんと忘れてくれた?」
「よんじゅう……ご!」
「あー!忘れてないじゃんー‼空斗くんのいじわるー!」
「ははっ、ごめんね。その時も話したと思うけれども気が変わったんだ。おれ、45キロの体重の女の子が好きなんだ。何かまずかったかな?」
「じゃあ、わたしが太って体重が50キロになったら?」
「50キロの女の子が好きになる」
「さらに太って55キロになったら?」
「55キロの女の子が好きになる」
「じゃあ……」
「もういいから」
「え?」
「体重なんかどうでもいい。おれは希さんが好きなんだ。ただそれだけだから」
「ありがとう…空斗くん優しいね。」
「優しいんじゃなくて、本当にただ好きなだけだから。」
「うん。…じゃあ、わたしも今まで言えなかったこと話してもいい?」
「どうぞ」
「空斗くんのご飯食べてる時の表情がかわいくて、わたし好きなんだ!」
「………よるのとうきょうたわーからのけしきってやっぱりきれいだね~」
「あー!話変えたな!」
「変えてないもーんだ」
彼の表情はそっけないんだけれども、口調では必死に否定をしていたの。
「えっ?なにその言い方、空斗くんこどもみたい。」
「こどもでいいヨーダ!」
「あはははっ。」
「そんなに笑うところ?」
「幸せだなって思って。…こうして空斗くんと笑っていられて。」
「……おれもだよ」
わたしたちは真剣な表情でお互いを見つめていた。