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passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.99

それから希と空斗くんは少しの間公園のベンチでお話をしていた。汐留トンネルを通っておでかけに出た希の子どもの頃のお話、始めて空斗くんに会った日の帰り道に見た景色のお話、空斗くんの学校生活のお話、そして、二人が座るベンチから見える東京タワーのこと。二人にとっては、それは本当に少しの間のことだった。でも、時間は二人が思っていたよりもいたずらに進んでいた。だから、希が腕時計で時間を確認した時は二人ともびっくりして慌てて駅に向かったの。
今日も空斗くんは希を送っていってくれた。彼がそこまでしてくれる理由は二つ。一つは、空斗くんは希のことを本当に大切に思っていたから。もう一つはね、空斗くんは少しでも希と一緒にいたかったから。だから、時間やお金の価値なんかをこの頃の空斗くんはほとんど感じていなかったんだって思うの。空斗くんにとっては、希がなによりもの幸せだったから。
希は公園でお話をしていた時、少し期待していたんだ。お互いのジェラートを食べたことだし、「あるかもしれない」ってね。でも、なかったのよね。別に希は落ち込んだりはしていなかったよ。少しの淡い期待くらいの気持ちだったから。
二人がバイバイをした時は「また明日おやつの時間にね」って、そう笑顔で約束をした。それからも二人はケータイで連絡を取り合ってその夜は一緒におやすみなさいをしたんだ。
……尊いね。とっても尊いんだよ。