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passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.101

希は本当はその理由をわかっていた。希は彼が与えてくれる幸せに酔っていただけなのかもしれない。
彼は最後の時以外、希に何も言わなかった。希は自分の不安を、自分の喜びを、自分の苦しみを、空斗くんに理解してもらいたかった。だから最後に空斗くんが話をしてくれるまで、希は空斗くんのことを本当はなにもわかっていなかったんだ……
空斗くんにだって不安があって。
空斗くんにだって喜びがあって。
空斗くんにだって苦しさがあって。
でも、彼はそのことを口にはしなかった。彼は自分の感情を殺して希の不安を優先していたから。あれだけ気持ちが安定しない希を隣で支えているのは相当な疲弊を受けたと思う。それでもやっぱり…彼はなにも言わなかった。希の不安を支えて、希の喜びを必死に理解しようとした。だから、だから東京タワーと空港だけじゃん。空斗くんが希を連れ出したのは……
でも希は気づけなかった。…希は結果的に自分のお気に入りの場所ばっかり空斗くんを連れまわしていたことになる。希は所沢にも、空斗くんの寮の近くにも行ってないんだよ。自分をわかってほしかったから、自分の地元ばっかりだった…自分の好きな曲ばっかりを…自分の好きな映画を……
……なにしてたんだろう。