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passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.108

トイレはお店の前の通り沿いにあった。

わたしはトイレを出てから通路を歩いてお店に戻った。通りのカーブを抜けるとお店の中じゃなくて、お店の前のベンチに空斗くんが座っていた。それに空斗くん何かの紙袋を持っている。「なんの袋なんだろう?」トイレに行く前は空斗くんがその袋を持っていなかったことを確認しながら近づいた。

「お待たせ。」

「おかえりなさい」

「空斗くん、その袋なに?」

「はい、これ」

「え?」

わたしは空斗くんが差し出してくれた紙袋を手にした。そしたらその紙袋のマークが目の前のハンドクリーム屋さんのマークと同じことに気がついた。

「え、空斗くん、これって……」

「フローラルの香りのハンドクリームだよ」

「そんな、悪いよ。だってこれわたしが使うものだし、空斗くんに探すのずっと付き合ってもらっちゃったのに……」

「気にしなくて大丈夫だよ」

「そう言われても…ちょっと待っててね。」

わたしは店内に入るとそのハンドクリームの値札を探した。

『75g 税込み2520円』

値段を確認するとわたしは空斗くんのもとへ戻った。

「やっぱりダメだよ。ハンドクリームにしては高いし、わたしが使うハンドクリームだから。」

「……少し話してもいいかな?」

「うん。」

わたしがそう答えると空斗くんはまたベンチに座った。その姿を見てわたしも空斗くんの隣に座ったの。

「お金って大切なものだよね」

「うん。」

「おれにとって希はとても大切な人なんだ。希が喜んでくれたり、笑っている姿を見ることがおれにとっての幸せだから。だから大切なお金は大切な人のためにおれは使いたい。金額の高いとかそういうことはどうだっていい。おれにとってはただそれだけなんだ。こんな理由じゃダメだったかな?」

空斗くん……

「ううん、ダメじゃない。ありがとね、わたしすごく大切にされてるんだって感じるの…本当にありがとう。でも、無理はしないでね。」

「おれカッコつけたりするの苦手だから、見栄は張らないから安心して!受け取ってくれるかな?」

「うん。ありがとう…わたし大切に使うから!」

「そうしてくれるとおれも嬉しいよ」

「うん! 空斗くん手を出して。」

「え、こう?」

彼はわたしの前に両方の手のひらを出した。わたしは空斗くんがプレゼントしてくれたハンドクリームを紙袋から取り出して、その手のひらにハンドクリームを取ってつけた。

「おれにくれるの?」

「うん!わたしも今使うから空斗くんも塗ってね。」

「わかったよ」

彼はわたしが取ったハンドクリームを素直に手になじませている。わたしもハンドクリームを手に取った。

「一緒だね!」

「え、うん」

彼は少し恥ずかしそうにしている。でも、わたしはとっても幸せだった。

「つけた感じはどう?」

「わたしの肌に合う感じがするし、それにやっぱりとってもいい香り。空斗くんは?」

「すごくいい匂いがするなとは思う。でも、普段ハンドクリーム使わないからよくわからないや」

「あははっ。普段使わないとそうだよね!」

「うん。 違うところも行ってみる?」

「そうだね、そうしよっか!」