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passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.112

1226()

………。

目を覚ますとそこにはいつもとは違う真っ白な天井があった。そして目線を少しずらすと点滴筒が見える。さらに奥を見ると白いカーテンがある。でも、なんだか世界がぼやけて見えた…そっか、ここは病院だったんだ。昨日の夜中にわたしは体調を崩してお母さんに病院に連れてきてもらったんだった。枕元を見ると電子時計が置いてある。わたしは左目をつむってから時計を見た。

AM10:46

つい数時間前までわたしは苦しんでいたんだよね、本当に辛かった。目も覚めたことだし誰か呼んでもよかったかもしれないけど、わたしはしばらくじっと横たわっていた。

……トン、トン、トン

足音が聞こえる。それも一人じゃなくて、二人の足音が近づいてくるのがわかる。

「こちらのベッドになっています」

「ありがとうございます」

ガシャッ

病室の扉が開くと看護師さんとお母さんが中に入ってきた。その姿を見てわたしは体を起こした。その時、布団から出たわたしの右手にはまだ点滴が刺さっていた。

「……」

あれ?声が出ない…どうして?

「……」

やっぱり声が出ない。

「どうしたの希?」

わたしは必死に喉を抑えてジェスチャーをした。

「え、苦しいの?」

わたしは首を横に振った。

「私、先生呼んできます!」

わたしの状態を見た看護師さんが担当医の先生を呼びに慌てて飛び出していった。

「苦しくないならどうしたの?」

今度は喉を指さして両手で×をつくった。

「もしかして声が出ないの?」

わたしは首を縦に振った。

「いったいどうして……」

お母さんはとても不安な表情でわたしを見つめている。ごめんねお母さん、心配かけちゃって……

「今先生が来るからもう少し待っていてね」

わたしはお母さんを安心させるために笑顔をつくって首をゆっくりと縦に振った。でも…このままずっと声が出なかったらどうしよう。内心は不安でいっぱいだった……

「お待たせしました」

病室の扉を開いて先生が入ってきた。昨日は体調が辛くて先生の顔まで覚えていられなかった。だから今わたしの目の前にいる先生が昨日の先生と同じだったのかはわからない。

「先生、娘の症状はいったいどういったものなんですか?」

お母さんが心配そうにそう聞いた。

「今朝検査の結果も出たのですが、娘さんはアレルギーにかかったものだと思われます」

え、アレルギー?

「先生、アレルギーとはどういったことですか?娘は今までアレルギーを出したことはないのですが」

「アレルギーとは言っても寄生虫のようなものに近いですね。何かの動物から感染し、潜伏した状態だったのが昨日発症したものと思われます。希さん、今の体調はどうですか?」

「娘は今声が出ないんです」

「そうでしたか…他にはどのような症状がありますか?」

そう言うと先生は白衣のポケットからメモ用紙とペンを取り出してわたしに差し出した。

『左目がよくみえません。それと声が出ないくらいです。』

わたしは左目をつむって症状をメモ用紙に書いた。

「それでは昨日の一番辛かった時はどのような症状がありましたか?」

『寒くて熱があるような状態でそれにだるかったです。』

「なるほど…ということはアレルギー自体は熱やダルさの方ですね。体調不良自体の原因はやはり寄生虫で、その寄生虫は喉と目に悪影響を及ぼすみたいですね」

寄生虫だなんて…それはどうにか出来ないんですか?声は元通り出るようになるんですか?目も元通り見えるようになるんですか?」

「安心してくださいお母さん。点滴を通して今も寄生虫を少しずつ殺しているところです。現に娘さんの熱が平熱に戻っています。これは寄生虫が死んでいる証拠です。しかし、油断は出来ませんので抗生物質をお出しします。きちんと所定の期間飲み続ければ目は2週間、喉は1週間程で良くなるでしょう」

「よかった…ありがとうございます先生」

「いいえ、とんでもありません」

「ところで先生、娘はいつ自宅に帰れるんですか?」

「点滴がもう少しで終わりますのでそしたら帰宅していただいて結構ですよ。ですが、お家で忘れることなく薬を処方してくださいね」