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passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.118

わたしはペンを走らせる。

『もちろんです。お手数おかけします。それにありがとうございます。』

「うむ」

それからわたしはスタッフさんやキャストさん達一人一人に謝りにいった。みんな優しいから、――「大丈夫だよ」とか、――「無理しないでね」って言ってくれた。

一通りが済むとわたしは後ろを振り返った。さっきまでと変わらない空斗くんがそこにいる。わたしは彼を目指して歩く。そしてわたしのその姿に気付いた空斗くんこっちに向かって走ってきた。

「もう出てきて大丈夫なの?」

わたしはすぐにペンを走らせた。

『うん、目が見えにくくて声もまったくでないんだけど、熱はないから大丈夫。』

「とりあえずよかった…ごめんね。電話出られなくて」

『そんなことないよ!わたしこそ夜中にごめんね。』

「希が苦しんでる時におれはただ寝ていただけなのが悔しくて……」

空斗くん……

『ありがとうね。でも今日はそんなことよりも』

わたしはそのメモ書きを空斗くんに見せると、新しいページを開いてまたペンを走らせた。

『空斗くんお誕生日おめでとう!』

「ありがとうね、嬉しいよ」

空斗くんはそう言ってくれたけど、わたしは自分への不甲斐なさでいっぱいだった。

『ごめんね』

「どうして?」

『空斗くんのお誕生日なのにわたしこんな状態で』

「そんなことないよ。おれは何も不満はないから」

『でも、体がこんなんだからお誕生日プレゼントだって用意できていないの。空斗くんには申し訳ないんだけど今日一緒にプレゼント見てくれない?お金は私が払うから!』

わたしの言葉を見て空斗くんが真剣な顔つきに変わった。

「……プレゼントなんていらないから。それにまだ体調も万全ではないと思うし、今日は無理しなくていいからね。撮影が終わったら家にすぐ帰った方がいいんじゃないかな?」

わたしはその言葉を聞いてショックだった…悲しいよ。

『わたしとっても悲しいよ。空斗くんにそんな風に言われちゃうなんて。わたしだって空斗くんの誕生日を一緒に過ごしたいし、お祝いしてあげたいんだよ!それなのに家に帰っていいだなんて… 病人だからわたしは空斗くんにとって邪魔になっちゃってるのかな?』

わたしは時間をかけてゆっくりと丁寧に言葉を振り絞って書いた。

「ごめんね、言い方がよくなかったね。本当にごめんなさい…おれはただ希が心配だったからなだけなんだ。邪魔だなんて全く思っていないよ。それなら今日は撮影の後の時間を一緒に過ごしてもらってもいいかな?」

『当たり前だよ…』

「ありがとう。ただ、お願いがあるんだけど、夜は空港の中で過ごさない?あまり遠くに出たりして希の体に負担をかけたくないんだ。それにやっぱり誕生日プレゼントもいらない」

『どうしてプレゼントを受け取ってくれないの?やっぱりわたしが用意できていなかったからかな…』

「違うよ!プレゼントなんてどうでもいいんだ。おれは希が傍にいてくれる。それが何よりもの幸せだから。だからもしプレゼントをくれるなら希が元気になってかもらってもいいかな?」

やっと空斗くんの気持ちを理解できて少し安心した。

『私のこと心配してくれてありがとうね。私早く元気になるね!』

「そうだね、おれも希に早く元気になってほしいな。他にもいろいろ話したいことあるんだけど、後はその時に話すね」

『うん、わかった。』

「じゃあ、教官のところに行こうか」

わたしは首を縦に振った。

歩いている最中、空斗くんはわたしの少し斜め前を歩いていた。話したいことってなにかな?正直、その内容の事を考えると不安だったの……