passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.125

吉田さんの車にいた時間も、家に帰ってきてからの時間もしばらくケータイを開くことは出来なかった。空斗くんからお返事は返ってきてたと思う。でも、しばらくは一人になりたくて自分の部屋のソファに座ってずっと考えた。少し考えが落ち着くとわたしはケータイを開くことができた。お返事も返したけれども、気持ちは全く違う方向へと向いていたの。

 それから夕飯食べてお風呂入ってまたこうやって悩んでいて…でも、やっぱり空斗くんと離れる事は考えられなかった。

コンコン

 部屋をノックする音が聞こえた。きっとお母さんだ。

「なに?」

「お母さんよ。入っていいかしら?」

「うん。」

 お母さんはパジャマ姿で部屋に入るとわたしの隣に座った。お母さんと話をする時はいつもお母さんの部屋で話すから、だから今日はなにかがおかしいと思った。

「お母さん、どうしたの?」

「ちょっと話があるのよ」

「そうなんだ。」

 すごく嫌な胸騒ぎがした……

「ドラマは今回はうまくいったみたいだけど、あなた大丈夫?最近気が緩んでいるんじゃないの?」

「そんなことないと思うけど……」

 昼間、社長に言われたこともあってわたしは少し弱っていた。

「絶対に気が緩んでいるわよ。この間の病気だって何か別の他の事に集中していて気が緩んでいたから自己管理が甘くなってしまったんじゃないの?」

「……。」

言い返す言葉は、見当たらなかった。

「ねえ、希。あなたお母さんとお父さんに女優として生きていくために約束したことを忘れたわけではないでしょ?」

「……うん。」

「社会は広いのよ。これから素敵な出会いも沢山ある。だから今はやるべきとに集中しなさい。よそ見してる余裕なんて新人のあなたにはないでしょ?」

「そう…だね。」

「広い視野を持ちなさい、希。あなたに相応しい人間は必ずこれから希のことを待っているし、希もその人のことを待っていなきゃいけない。でも今は…違うわ。お母さんだからこれくらいで済むけれども、お父さんだったら……ね?わかるでしょ?」

「うん……」

「もうこれ以上お母さんに心配かけさせないでね。じゃあ、お母さんもう寝るから」

「おやすみなさい。」

 話が終わるとお母さんは部屋を出て行った。

 ケータイの電源を入れるといつもの通知が来ていた。…明日返事しよう。わたしはケータイをテーブルの上に置いてベッドに仰向けになった。

 広い世界…か。社長の言った通り「大人」の話は信じたほうがいいのかもしれない。お母さんも社長も「思いやり」がある人だと思うし。

明日はミーティングで久しぶりに事務所で由紀と会える。気持ちはある程度固まってきてはいるけど、由紀にも相談してみよう。

……これ以上考えると頭がパンクしそうだった。だからもう寝よう。

 

 

 

ダメだよ…希。