passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.126

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事務所のミーティングが終わるとわたしは真っ先に由紀に声をかけた。「由紀に相談したいことがあるんだけどこの後いいかな?」って。由紀は「いいよ」って言ってくれたから、わたしたちはいつもおしゃべりする時に利用する事務所から離れた住宅街に位置するカフェに入った。

「それで本題はどういったご用件なの?」

運ばれてきたカフェオレを一口飲むと由紀はそう口にした。

「実はね…、結論から言うとね、空斗くんと別れようと思ってるの。」

「そうなんだ」

由紀は落ち着いた声でそう言うと、もう一度カフェオレを口に運んだ。

「わたしいろいろ考えたんだけどね、やっぱりわたしまだ22歳だし、世の中の事や社会の事をまだ何も知らないと思うの。この前初めてドラマに出させてもらえたけど、わたしにはこれからの事だってあるしね。」

「ふーん…希がそう思うなら別にいいんじゃない。 ただ私には、希が世の中のこと知らないって事と成田くんと別れる事となんの関係があるのかわからなけれどね」

由紀のその言葉にわたしは何も答えられなかった……

「希は大切な友達だから、希自身の気持ちを私は尊重するよ」

「……ありがとね。」

それはわたしがやっとの思いで振り絞った声だった。 目の前にいるのは由紀だけど、わたしは由紀じゃない誰かと心の中で激しい罵り合いをしているような、そんな気分だった。

「それで彼にはなんて別れ文句を言おうとしてるの?」

「今由紀に言った事を空斗くんに言おうと思っている。」

「そうなのね」

由紀は感情のない声でそうつぶやいた。

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