passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.128

プルプルプルッ♪

テーブルの上に置かれたケータイが鳴り響く。…一瞬「空斗くんかな」って思ったの。連絡先消してるんだからそんなはずないのにね……

『田中 由紀』

 電話は由紀からの電話だった。

ピッ

「もしもし由紀?」

「希?夜遅くににごめんね」

「ううん、大丈夫だよ。どうしたの?」

「実はね、今日成田くんに会ったんだ。初対面だったけど、希に何度も成田くんの写真見せてもらっていたから街で私すぐに「成田くんだ」って気がついたんだ。だから私、成田くんに声をかけてそれから少し話したの」

「そうなんだね…でも、空斗くんとは今日お別れしてきてもう会うこともないから、そのことはわたしには関係ないよ。」

「知ってる。成田くんから聞いたよ。…実はね、私成田くんと話をして決めたことがあるの」

「……なに?」

「私、事務所をやめる」

「え……。なんで?どうしてなの?」

「女優としての夢は諦めてないから他の事務所に拾ってもらえるならそこで活動を続けていこうと思っている。ダメなら、時期も時期だし就職浪人で来年から民間企業でお仕事しようって思っているの」

「なんで…どうしてなの由紀?どうして空斗くんとお話しして事務所をやめようって思ったの?意味がわからないよ……」

「別に成田くんが私に何か言ったわけじゃないよ。ただ…、私が薄々感づいていたことが真実だってわかってしまったからさ……」

「事務所にはいい人達がたくさんいるよ!受付のおばさんだって、優香先生だって、他の先生や事務の人達、それに吉田さんや社長だって…それなのになんで事務所をやめちゃうの……」

「ごめんね希。でも、希が言った最後の二人を私は許せない。あのニ人だけは…絶対に」

「なんで?二人とも思いやりのある人だよ。」

「明日会って話せないかな?その方がいいと思うし」

「……わかった。由紀は明日予定ある?」

「私は何もないよ。希は?」

「わたしも明日はお休みだよ。」

「それならいつものカフェでいいかな?時間は少し早いんだけど朝の9時半でもいい?」

「うん。大丈夫だよ。」

「ありがとね。じゃあ、また明日ね」

「うん。また明日。」

「おやすみ」

「おやすみなさい由紀。」

プチッ

明日は由紀の事をちゃんと説得しなきゃ。由紀に「諦めちゃいけない」ってことと、社長と吉田さんに対するなんらかの「誤解を解いてあげなきゃ」ってそう思いながらわたしはベッドの中へと入っていった。