passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.135

この頃の希は怖くて仕方なかったの。あの忘れる事の出来ない二日間において、悪者は空斗くんと由紀だってずっと思っていた。少なくともお母さんや吉田さんたち事務所の人は「希は悪くない、かわいそうな被害者だ」と言ってくれていた。でも、今の由紀はかつての希が夢見ていた場所にいる。自分は今では「落ちこぼれ女優」とまで陰口されていることも知っている。その圧倒的な結果の差が「自分が間違っていたのかもしれない」という恐怖としてすぐ背中まで近づいていたから、希は振り返ることができなかった。それに空斗くんだって、もうパイロットになっているかもしれない。真面目で賢明な彼が何かにつまづいているとはとても考えられなかった。その事実を希自身が確認することは出来なかったけれども。……それはまさに由紀が言った、――希じゃあ、空斗くんには敵わない。その言葉が現実になったようなものだった。そう思うと、空斗くんと由紀が怒った理由なんてどうでもよかった。自分の不甲斐なさで心が痛くて痛くて仕方なかったから。

でもね、希自身この2年間。どんなに自分自身に言い聞かせても、空斗くんを思い出さない日は一日としてなかったの……