passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.143

「私はお父さんの事もお母さんの事も、お姉ちゃんの事も好きだよ。それにずっと今まで親が正しいって思い込んで生きてきた。それはお姉ちゃんも変わらないと思う。お母さんもお父さんも私たちの事が好きで、大切だからこそ手元においておきたいんだって思うの。でもね、なんで親の言いなりに私はならなきゃいけないんだろうって思う。私は自分の気持ちを押し殺してこのまま実家通いの都内の大学に進学してしまったら、それは親の顔色見てしか息ができないお人形さんだって思うの!」

 「お人形」…その言葉もわたしの胸に痛いほどに響くものだった。

「本当にいい親っていうのは、子供を信じてあげて、子供の気持ちを尊重してあげる人だと思う。私たちの親は自分たちの気持ちを、自分たちの教育観念を押し付けているだけ。絶対に間違っている!家は金銭的には裕福な方だと思う、でも一人暮らしが許してもらえないなんて

「…それはわたしにもお母さんとお父さんを説得してほしいってことだよね?」

「どうしてそう思ったの?」

「わたしに助けを求めているように聞こえたから。お母さんとお父さんと戦うための。」

「そうね、お姉ちゃんの言う通りだよ。私ひとりじゃ絶対にお母さんもお父さんも聞く耳を持ってくれないから」

「わたしが言ったからって理解を示してくれる人ではないと思うよ。家の親は。」

「そんなことはわかっている。でも、やらなきゃいけないんだよ。逃げちゃダメなんだよ。どんなに厳しい現実が待っていたとしても私には絶対に譲れない想いがある。譲ってしまったら私は彼と離れてしまう事になるから…」

百合のその言葉に空斗くんの面影を感じた。

「それにね、お姉ちゃんは大人にはまだ完全になりきってない。だから、お姉ちゃんならわかってくれるって信じている

「もしかしたらわたし、お母さんとお父さんにも百合の付き合っている野球部の彼氏のこと話しちゃうかもしれないよ?」

「それは心配してないよ。お姉ちゃんはそういう人じゃない。だって「大人」ではないもん」

「わたしもうすぐで24歳だよ。24歳はもう十分大人だからね。」

「ううん。そういう事じゃないの。年齢の話じゃない。私は大人」なんて本当は存在しないと思う。それは「社会」が作り出した勝手な幻想だと思うから。大人は他人の気持ちなんてどうだっていいの。お金や地位、それに自分に都合がいいことをガソリンにして動く。…お姉ちゃんは違うよ。だって思いやりがあるもん。思いやりは優しさとは違うから

「そっか、ありがとうね。わたしは百合に、いちよはよく思ってもらえてるみたいだね。」

「当たり前だよ。両親を一緒に説得してくれるかどうかはお姉ちゃんの判断に任せる。お姉ちゃんが私が間違ってる、考え方が幼いって思うなら手伝ってくれなくて大丈夫だから。お姉ちゃんまで怒られる必要はないから。でも、改めて言わせてほしいの。私は私自身のために、そして心の底から大好きな彼と一緒にいたい。ただそれだけなの」

「もし、その彼と同じ大学に行ってそこで別れてしまったら百合はどう思う?」

「都内に残ってすれ違いで別れるよりはよっぽどマシだよ。人間いつかは絶対に大切な人とお別れする時が来るんだからさ、だからこそそれまでは一緒にいたいじゃん。自分から言い訳並べて離れていく理由なんてない」

百合は姉のわたしにじゃなくて、それに両親にでもなくて、やっぱり空斗くんに似ていると思う