passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.149

「それはいつ頃から考えるようになったの?」

「具体的に言葉にして考えたのは昨日からです。ただ、そういう感情は前からありました。」

「そうなのね。…続けるも引退するもしっかり自分で判断して後悔しないように行動してね」

「はい。もう少し考えてみようとは思っています。でも現時点では、今のドラマの撮影が終わったら引退する方向で考えています。もう、役を演じていても楽しくなくて辛いだけですし…」

「女優をやめたらどういうお仕事をしようと思っているの?」

「まだ具体的には考えてはいませんけれども、大学を卒業して2年ですし、第二新卒で事務系のお仕事を中心に探そうって思っています。」

「希ちゃんの人生だから自分自身で決断してほしいとは思うけれど。でも、もし女優を引退するならうちの学園部の事務職に空きがあるわよ。その時はよかったら検討してみてね」

「ありがとうございます、紗枝さん。正式に引退した時はきっとお世話になります。」

まだ引退するって決まったわけではないでしょ」

「でも、きっと引退すると思います。」

「そう。 空斗君と仲直りしたいとは思わないの?」

「…それは、全くないと言ったら嘘になります。でも、わたしは彼とは結ばれない運命なんです。彼とは同じ時間を過ごしてはいけないんですから。」

選択肢って、「自分にはこれしか残されてないものだ」って思いがちだけれども、実はそうじゃないと思う。「常識」とか「社会」とか、「普通」、「親」、「大人」みたいな言葉にふるいをかけられて残ったものだけを、私たちは「選択肢」と呼んでいる気がする。だから、本来は選択肢ってそんなに少ないものじゃない。だって、私たちは生きているんだから」

「そうですよね、紗枝さんの言う通りだと思います。でも、わたしは…」

この先の言葉に詰まった。

「そうよね。希ちゃんはこれだけのお嬢様だもんね。でも、やっぱりこれだけは教えて。希ちゃん自身の本当の気持ちは空斗くんと仲直りしたいんじゃないの?実際に出来るかどうかは別として」

「そうですね。そんな奇跡が起こったらいいなとは思います。でも、空斗くんはわたしのことが嫌いですし、怒っています。」

「どうしてそう思うの?」

「最後に会った空斗くんは、わたしが見たことない怒った姿でした。それにやっぱりお母さんとの約束を思い出すと、わたしは空斗くんには会えません……

「…教えてくれてありがとうね」