passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.150

最後の質問に対する答えを聞いて、紗枝さんは少し呆れていた。希自身の素直な気持ちを聞いているのに、お母さんとの約束の話を希はしていたから。そういうところが紗枝さんの言う選択肢を狭めているってことなんだよね。関西に進学をする選択肢を見つけた百合の方が、希よりも物事を広く見えていたんだそれに紗枝さんから事務のお仕事の話を聞いた時には、もう希の心のほとんどはそっちに向かっていた。

それからもしばらく希は紗枝さんと部屋でお話をしていた。紗枝さんは本当の意味で優しかった。希自身のためを思って話をしてくれていたけれども、決して考えを押し付けてはいなかった。だから、希自身が下した判断は尊重してくれるって言ってくれたの。でも、それって実は当たり前のことなんだよね。希自身が育ってきた環境を考えると当たり前ではなかったけれど

そして、希は自分が少し天狗になっていたことにもこの時に気が付いた。女優としてのものは、すべて実力で掴んできたものだと思っていたけれども、違った。ドラマに出られるようになったきっかけは運と吉田さんと社長のおかげ。アフター5の恋で女優としての評価を高められたのは空斗くんのおかげ。すべて自分の実力だと勘違いしていた。

希は気が付かなかったけれども、紗枝さんの言葉にはつ大きな疑問があった。紗枝さんは空斗くんのフルネームを口にしたけれども、希は空斗くんの名字を紗枝さんに話してはいなかった。それなのにどうして紗枝さんは空斗くんのフルネームを知っていたのか…