passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.155

……

それから10分程経った頃、わたしは気持ちを固めた。

わたしは部屋を出ると二階に降りてお母さんの部屋の前に向かった。

コンコン

「誰?」

「お母さん、わたしだよ。」

「希ね。入っていいわよ」

「うん。」

右手に力を込めてドアを開けた。部屋に入るとお母さんはベッドの上で何かの雑誌を読んでいるところだった。わたしは部屋の中央まで入るとそこで立ち止まった。

「どうしたの?何か話でもあるなら座りなさい」

「ありがとう。でも大丈夫だから。…百合のことなんだけれども、百合の気持ちを認めてあげてほしいの。わたしからもお願い、お母さん。」

わたしは実の母親に向かって頭を自分の腰のあたりまで下げた。

「どうしたの?そんな…いいから顔を上げなさい。それにこれは百合とお母さんたちとの問題で希には関係がないことでしょ?」

「そんなことない、わたしにも関係ある!だって、百合はわたしの妹だもん。」

「希がどこまで知っているのかわからないけれども、あの子関西に進学したいだなんて言っているのよ」

「全部知ってるよ。」とは言えなかった。その言葉を口にしてからもしものことがあったら、わたしは百合の気持ちを台無しにしてしまう事になってしまう

「知ってるよ。百合が関西の大学に進学したいことは。」

「それならどうして百合の肩を持つの?本来希はお母さんと一緒に百合のことを説得しなきゃ…」

「そんなこと必要ない!それにわたしはしたくもない!」

きっと生まれて初めて、お母さんの言葉を遮ったと思う。わたしのその姿にお母さんも驚いている。

「あの子、ずっと関西の大学に進学したかったんだよ。でも、お母さんもお父さんも絶対に認めてくれないってわかっていたから言わなかったんだよ。」

「そんなの当たり前じゃない」

「当たり前じゃないんだよ!百合はもう18歳だよ。これまでずっと勉強頑張っていているし、生活態度だって真面目なのに、どうして百合は自分の行きたい学校を選べないの?どうして親の顔色見て自分の大切な将来を見据えなきゃいけないの?」

「…希が言いたいこともわかるわ。でも、世の中はとっても危ないし、お父さんみたいな誠実な人間ばかりじゃないの。遊んでばかりの人間だってたくさんいる」

「わかってないよ…お母さんは何もわかってない!」

「じゃあ、希は百合のこと全部わかってるの?」

「わかってるよ。だって、わたしはお母さんとお父さんの子で人に育てられてきたんだもん。それに百合よりも6年早く生まれてきて、百合よりも先に同じことを経験してきている。わたし自身はお母さんとお父さん言うことをずっと信じて生きてきた。でも、今のわたしは後悔ばかりが残っている。後悔してばかりの人生なら、わたしは自分自身で決断して、それで結果がダメだったら受け入れられるのにって最近考えている。でもね、自分自身が一番いけないってこともわかっているの。だから、百合の気持ちは痛いほどにわかるんだ。」

「でもね、希。女の子の一人暮らしだなんて危なくて親としては不安で仕方ないから。だからお母さんは百合自身のことを考えて言っているのよ」

「そんなの嘘だよ。危なくて心配なら大学の女子寮にでも入れさせてあげればいいじゃん。百合は別に一人暮らしがしたいって言ってるんじゃなくて、関西にある大学に進学したいって言っているんだよ。…お母さん本当は、百合が親元を離れていくことが寂しいだけじゃないの?」

「…確かにそれもあるわ。でも、お父さんだって…」

「今はお父さんは関係ないじゃん。」

また、遮った。