passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.156

「お父さんは関係ない。大切なのは百合の気持ちだよ…お父さんが反対したとしても、わたしとお母さんが百合の気持ちを応援してあげなきゃ、そうじゃなきゃ百合は誰も味方してくれる人いないじゃん…そんなの可哀想だよ。」

「…そうね。希の言っていること、間違ってはいないわ。でも、そんな簡単には認められないわ」

「今すぐに認めてあげてとは言わないけど、時間もあまり残されていないから残された時間の中でお母さんも納得した上で認めてあげて。ただ、つだけ言っておきたいことがある。お母さん自身がどう思っていても構わないけど、わたしにとっては、お父さんが絶対じゃない!お父さんよりも誠実な人だって知ってる。お父さんよりも優しい人だって知ってる。お父さんよりも意思の強い人だって知ってる。…お父さんが、敵わないような人を知ってる。」

わたしの言葉は全部同じ人間を指していた。そして最後の言葉は、百合の言ったことを、わたし自身の愚かさを、自ら認める事だった。

「…そうなのね。希がそう考えているなら、それでいいんじゃないかしら」

「うん。 じゃあ、お母さん。わたし部屋に戻って寝るね、おやすみ。」

……

お母さんからの返事はなかった。

 

 

 

今まで希にとって親に向かってここまで強く自分の気持ちを言ったことがなかったから、この日は大きな一日となった。実はね、女優と民間企業への就職のことで悩んでいた時期は、お母さんが絶対的に反対の立場だったけど、お父さんはあっさり味方してくれた。希はこの時もまだ知らなかったけれども、お父さんは娘人のことにそこまで口出しをする人じゃなかった。物事をややこしくしていたのは本当はお母さんだけだった。でもね、お母さんを攻めることは出来ない。だってお母さんは希と百合のことがかわいくて心配で大切でしょうがなかっただけだもん。

でもね、よく考えるとおかしかった。いくら希が初めての態度をお母さんに見せたからといって、いくら希が正論を言ったからといって、普段のお母さんならもっと反論してくるはずだった。それなのにこの日は希の言葉に反論もしなければ、怒りもしなかった。そこにはね、希がまだ知らない理由があった。いずれ知ることになる理由が。