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小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.158

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……。

朝、目を覚ますとすぐに昨日のことを思い出した。まだ怖さも少しあったけど時間をかけてわたしはゆっくりとベッドを出た。リビングに向かう時に部屋の時計を確認すると10時を回っていた。

リビングに入るとお父さんがテーブルに座っていた。平日は朝早くから夜遅くまで、休日だってほとんど家を留守にしているお父さんがこの時間に家にいたことにわたしは驚いた。

「お父さん、今日はどうしたの?」

「今日は仕事が休みなんだ」

「ゴルフにも行かないの?」

「今日は行かないよ。たまには家でゆっくりするのも悪くないって思ってな」

「そうなんだね。ところでお母さんは?」

「片岡さんと出かけてくるみたいで朝から留守にしているよ。希は今日は仕事あるのか?」

「うん、午後からドラマの撮影があるよ。」

「そうか。仕事の方はどうだ?」

「どうだ?って?」

「順調かと聞いているんだ」

「そうだね。最近はいちよ順調なのかもしれない。」

「それならよかった。希は今から朝ごはん食べるのか?」

「うん、そのつもり。」

「じゃあ、食べ終えたらお父さんの部屋に来なさい」

「……どうして?」

「まあ、とりあえず一度来なさい」

お父さんはそう言ってリビングを出て行った。

 

朝ごはんのパンを食べ終えるとわたしはお父さんの部屋に向かった。

コンコン

「お父さん、わたしだよ。」

「入っていいぞ」

お父さんの部屋には久しぶりに入ったような気がする。中に入るとお父さんは奥の机に座っていて何か冊子のようなものを見ていた。

「お父さん何見てるの?」

「これか?これはな、お見合い相手の写真を見ているんだ」

その言葉を聞いたわたしは机の上に何冊か他にも重ねられた冊子の姿を確認した。

「誰か会社の人でお見合いしたりでもするの?」

「いいや、違うんだ。ここにあるのは希のお見合い相手の写真なんだ」

「え……」

一瞬意味がわからなかった。

「お父さん、わたしのお見合い相手っていったいどういうこと?」

「希も明日で24歳だろ。すぐに結婚するかどうかは別としてこういう機会があってもいいんじゃ中と思ってな」

「……わたし何も聞いてないじゃん。」

明日が自分の誕生日だってことをすっかり忘れていた。それは去年も同じだったけれども。

「だから今言ったんだろう」

「そういうことじゃない!わたしお見合いだなんてそんな……」

「そう言わずに一度見てみろ。どれも一流企業で役員を勤める優秀な若者ばかりだ。でもまあ、若者とはいえみな希よりも最低5歳は年上だけどな」

「相手の人の会社がどうかなんて知らないよ! ……なんでお父さんは勝手にこんなことをするの?」

「それはお前に幸せな将来を安定して過ごしてもらいたいからだよ」

その言葉を聞いたら、お父さんをこれ以上は責められなかった。

「わかった。わたしのことを思ってくれていてありがとうね、お父さん。」

「よかった。じゃあ、お父さんとお見合い相手の方を見よう」

「でもね、お父さん。お父さんの言う通りわたしはもう24歳なの。これからは自分のことは自分自身で決めたいんだ。でも、せっかくお父さんが頑張ってくれたわけだから、相手の方の写真くらいは見るけど一人で考えさせてね。それにこれからお仕事にも行かないといけないから夜にでも見させてもらうね。」

「そうか、わかった。でも、みんな悪い相手ではないぞ。誰を選んでもきっと希を幸せにしてくれる」

お父さんの言っていることは間違っていないと思った。でも、わたしを世界で一番の幸せ者にしてくれる人はわたしのことを寂しさの谷底に落とすこともできる人。他の人をわたしが選んでしまったらきっと、それは幸せと寂しさの間だって思う。

「うん、わかった。…お父さん一つ聞いてもいい?」

「ああ、いいとも」

「わたしの結婚する人の職業がパイロットだったらお父さんはどう思う?」

パイロットか、危険な仕事だな。もしものことを考えるとお父さんはやっぱりオフィス勤めの方が安心していられるけどな」

「そっか。」

「なんだ、パイロットのボーイフレンドでもいたのか?」

「ううん、違うよ。聞いてみただけ。」

そう言うとわたしはお見合い相手の写真冊子を集めて両手で持った。

「じゃあ、お父さん見させてもらうけどその前にお仕事行ってくるね。」

「いってらっしゃい」