passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.159

わたしはお父さんの部屋を出ると自分の部屋に戻ってから冊子をテーブルの上に置いて仕事に向かった。事務所に行くと今日も吉田さんの姿は見えなくて事務の人に現場まで送ってもらった。

現場に着いてすぐに熊田さんと目が合ったけど今日は話しかけては来なかった。それに今日の熊田さんは少しおどおどしていたようにも見えた。もしかしたらわたしが昨日の夜のことを誰かに話してしまうかもしれないと思っていたのかもしれない。もうすぐこの世界からいなくなるわたしがそんなこと話すわけないのに。

撮影を終えて家に帰ってきてからはご飯食べてお風呂にも入ったからもう寝られる支度は出来ていた。いつもの寝る時間まではまだ余裕があったから昼間にお父さんから預かったお見合い相手の方の写真を見ることもできたけど、そんな気にはなれなかった。お見合い相手の方と結婚するなんて言ったらもちろん、写真を見ているところを百合に見られてしまうだけでまた怒られてしまいそうだったからさ。それに自分自身のきもちだってやっぱりまだ…

プルプルプル♪

電話だ。でもこんな時間に誰だろう。テーブルの上に置いたケータイを手に取ると、電話の相手は吉田さんだった。

ピッ

「もしもし。」

久しぶりだな横山。遅い時間に悪いな」

お久しぶりです。時間は大丈夫なんですけどどうしましたか?

「ああ… その事なんだけれどもな、明日はお前の誕生日だろ。だから明日は休んでいいからな」

「え、でもそんな。ミーティングはちゃんと出ないといけないと思いますし、それに他に何か予定もないのでわたしちゃんと行きますよ。」

「いいから休め。明日は事務所に来るな」

吉田さんのその言葉はとても冷たかった。

「…わかりました。」

「まだ日付変わってないけど、誕生日おめでとう」

「ありがとうございます。…吉田さんあの。」

「どうした?」

「最近事務所に行っても吉田さんのこと見かけないんですけどどうかしましたか?」

「まあ、それは他にいろいろ忙しい仕事があるからなんだ。お前は気にしなくていいことだからな。じゃあな」

ピッ

吉田さんはすぐに電話を切ってしまった。

今の電話からならわたしにだってわかる。吉田さんはきっと他の何か重大問題への対応に切羽詰まっているんだ。