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小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.162

「あなたと成田さんの関係は吉田くんから聞いたの。吉田くんは人をどうにかして別れさせましょうと提案してきたわ」

「どうして吉田さんがそんなことを…

「アフター5の恋のあなたの出演は、スポンサーさんとお金の問題でコネを回していたし、それ以外でも、あなたにはあなたの知らないところで大きな金額が動いていたからよ」

ニュースでやっていたことと今の社長の話を聞いて、点と点が繋がった。

「…もしかして、事務所の賄賂ってわたしのために使われていたんですか?」

「別にあなただけってわけでもないけど。でもまあ、あなたへの投資額が一番大きかったのは間違いないわね」

「そんな…

「だからこそ成田空斗はわたしたちにとって邪魔な存在だった。せっかくの大金を週刊誌なんかにお粗末にされるわけにはいかなかったからね」

「…いつ空斗くんに会ったんですか?」

「いつだったかしらね。時期は覚えてないけれども、あなた達がまだお付き合いしていた頃よ。私は吉田くんの運転で航空学院大学に行って学校帰りの彼を拾った。しばらく車の中で話をしたわ。「横山さんはこれからトップ女優に駆け上がる人間だから、あなたみたいな人が隣にることは許されないの」って私は話したわ」

「空斗くんはなんて返事をしたんですか?」

「「その通りだと思います」って言ったわ」

「そんな…

「でもね、彼はその後にこう言ったわ。「確かにのぞみさんは自分なんかにはもったいなすぎるくらいの素敵な方です。でも、そんなのぞみさんが自分のことを好きだと言ってくれます。僕は彼女が僕のことを好きだと思ってくれている以上、たとえ世界中を敵に回そうが、僕は彼女を守ります。僕は本気です。のぞみさんへの気持ちだけは譲れません」ってね。だからそのあとはお金で解決しようとした。でも、彼は勇敢だった。500万もの現金を前にしても即答で断られたわ。彼のお家は母子家庭なのにね、本当にとっても勇敢」

「社長は空斗くんの家庭状況まで調べ上げて、それで弱みにつけ込んだんですか…」

「失礼ね。彼の家庭の状態を考えてのちょっとした気配りよ」

「そんなの気配りでもなんでもありません!ただの嫌がらせです!」

「それでも彼は受け取らなかった。あなたとは違って」

「わたしはお金なんて受け取ってません!」

「いいや、受け取ったわ。彼の意志の強さの前に私も吉田くんもお手上げだった。だから今度は標的をあなたに変えた。あなたはわたしの言うこともあなたのお母さんの言うことも素直に受け入れた。そしてドラマに出演して大きな給与を得た。結果的にはお金で動いたことと何も変わらない」

「ちょっと待ってください。お母さんってどういうことですか?」

「あなたのお母さんにも協力してもらったのよ。それだけ」

大人の関与…やっと由紀の言っていたことがわかった。だから由紀はあの時わたしに具体的には何も言えなかったんだ。

「そうだったんですね…」

「あなたが犯した最大の罪は、成田空斗よ。今時あんなにいい男がるものなのね。私があなたの立場なら女優をやめてでも彼と一緒にいることを選ぶ。彼はそれだけの男よ。彼と話をしてからわたしは裏金を回すことをやめた。私自身も、若かった頃に持っていた大切なことを彼に再度教えてもらった気がするの。だから今ニュースで流れている問題は、全て昔の話よ」

わたしの目からは大粒の涙が流れていた。

ごめんね、空斗くん。わたしが間違っていたんだ。

そう思うとわたしは走って社長室を出ていた。そしてエレベーターを使わずに階段で1階へと降り、そしてラウンジへと入ると、吉田さんがいた。