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小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.167

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わたしは自分の部屋で息だけをしていた。

昨日起きた事を心が受け入れられてなくて、これからわたしはどうすればいいのかがわからない。

心配をしたお母さんやお父さんが部屋にやって来たけれども、わたしは中に入れさせなかったし話もしていない。

……今でも、空斗くんはまだロンドンにいるんじゃないのかなって、もう少し経ったら日本に帰って来るんじゃないのかなって、そう期待してしまう自分がいる。

でもね、テレビをつけるとニュースは昨日起きた飛行機事故の事ばかり。……そうするとね、胸がとっても痛むんだ。空斗くんは本当に死んでしまったんだって、もう空斗くんに会うことができないんだって。

それにね、ニュースでやってるんだよ。空斗くんだけなの。空斗くんだけが見つからないの。飛行機が海に落ちたのに、空斗くん以外の人はみんな助かったんだって。

……それってほとんど奇跡だよね。でも、どうしてその奇跡が空斗くんには起きないの?どうして空斗くんだけが……

わたしは誰にも弱い姿を見せることなく、ただただ一人で泣くことしか出来なかった。

何度も朝からケータイを確認した。……わかってるんだよ。わかってるけど、でももしかしたらって。あり得るはずない期待を抱いてしまう自分がいるの。

ケータイの電源を入れるとメールが一件来ていた。

「空斗くんからかな……」

違うことなんて自分が一番理解しているのに。

メールを確認すると吉田さんからのものだった。

『今回起きてしまった事を思うと、おれはお前になんて言っていいのか正直わからない。

だから気の利いた言葉をかけてあげる事が出来ないのを許してほしい。

 

成田空斗さんの通夜が明日30日木曜日の1830~行われる。

お前には成田家さん側からぜひ通夜と葬式にも出てほしいという連絡がこっちに来ている。

 

これが、おそらく俺のマネージャーとしての最後の仕事だ。

俺からもお願いだ。

ぜひ空斗さんの通夜と葬式に出てくれ。

 

おれはお前と空斗さんの身を引き離そうとした身だから偉そうなことは言えないけど、彼は本当に立派な男だった。

彼は大人を前に、権力を前に、一歩として、いや半歩として引き下がることをしなかった。逃げなかった。

勇敢な男だ。同じ男として尊敬に値する。

彼と同じ状況に俺が置かれたら、自分には彼と同じ行動を選択することは間違いなく出来なかった。

 

空斗さんは心から横山希のことを愛していた。

だから、頼む。出てやってくれ。

 

                                       吉田輝夫                                     

わたしは一通り読み終わるとそのままテーブルの上にケータイを置いた。