passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.170

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わたしは明け方の3時半には目を覚ました。そしてそれからもう一度眠りに就くことはなかった。その間、気が付いたらお葬式に行く準備は整っていた。でも、いつ自分が喪服を着ていたのかがわからない。…やっぱり認めたくない。

教官に言われた時間よりも早く家を出た。時間はきっと7時よりも前だったのかもしれない。部屋にいると気がくるってしまいそうで、おかしくなってしまいそうで…… でも、教官の車はすでにわたしの家の前の路上に止まっていた。わたしはゆっくりと車に近づき、助手席のドアを開けた。

「おはよう、希ちゃん」

懐かしい声だった。それは、わたしが一番幸せだった日々に毎日聞いていたもう一人の声。

「おはようございます。そしてお久しぶりです。」

「そうだね、久しぶりだったね。でもそんな気がしないよ」

「そうかもしれませんね。」

「とりあえず乗りたまえ」

「はい。」

わたしがシートベルトをするとすぐに車は動き始めた。

「これから所沢まで向かうから少し時間がかかるよ」

「そうですよね、所沢なんですよね。」

「希ちゃんは所沢には行ったことはあるかな?」

「いいえ、ありません。」

「そうか」

その後は無言の空気がしばらく続いた。

「…実はね、私は妻を亡くしているんだ」

沈黙を破ったその言葉にわたしはただ驚いていた。

「私は32歳で結婚をした。当時にしてはかなりの晩婚だよ。でもね、私の妻も32歳だった。彼女は私よりもさらに晩婚だったよ」

教官は表情では少しだけ笑っているようにも見えた。

「亡くなった奥さんとは同い年だったんですか?」

「ああ、そうとも。私たちは同学年だった。昔の私はね、今よりもずっと頑固者だったんだ。でも、妻と出会えて自分自身が変わったような気がしたよ。いや、変わったんじゃないのかもしれない。妻が本当の弱いを許してくれたからこそなのかもしれない」

「素敵な奥さんだったんですね。」

「ああ、そうとも。希ちゃんに負けないくらい可憐で、とても心の温かい人だった」

「きっと、わたしなんかよりも可愛らしくて、とても優しい奥さんだったんだと思います。」

「なぜそう思うのかね?」

「教官の奥さんだからです。空斗くんが心から尊敬した…空斗くんが…

彼の名前を口にした途端、ずっと我慢してきたものが溢れだしてしまった。

「ありがとう、希ちゃん。でも、私の妻は結婚して一年も持たずに亡くなってしまった」

わたしは自分のにいっぱいで教官のその言葉に何も返すことができない。