passing

小説や作詞について書きますし、余計なこともたくさん、そして自分の決心について日々思うことなんかも書くかもしれません

「Air」.172

それからしばらくすると式場に着いた。時間は開始の1時間以上も前だったけれど、数人の人が見られた。そして教官と共に車を降りると人の小柄で可愛らしい女の子がこちらに向かって歩いてきた。

「お久しぶりです教官。今日はわざわざ兄の葬儀に足を運んでいただきありがとうございます」

その言葉を聞いてわかった。この子が玲奈ちゃんだってことを。

「当然だよ。それでこちらは…

「希さんですね」

教官が言いかけた言葉を遮って玲奈ちゃんはそう言った。

「はじめまして。でも、どうしてわたしの名前を知っているんですか?」

「はじめまして。私は空斗の妹の玲奈です。希さんのことは兄から聞いています。テレビで拝見させていただいていたので存じてはいましたが、やっぱり綺麗な人ですね」

「いえ、そんな… でも、わたしも知っています。空斗くんから玲奈さんのことはよく聞いていました。」

「それは嬉しいですね。でも、私のことなんてそんなに話さなくたってよかったのに、お兄ちゃん」

「…あの、玲奈さんやお母様はわたしのこと、嫌いじゃないんですか?」

恐れてはいたけれども、確認せずにはいられなかった。

「…どうしてですか?」

玲奈ちゃんは驚いたような顔をしていた。

「だってわたしは、空斗くんに迷惑ばかりかけていました。傷つけてしまう事もありました。それに…こうしてわたしが空斗くんの傍にいると悪いことばかりが起きてしまって…」

式場についてからは我慢しようって車の中で思っていたのに、もう泣いてしまった。

「それに、こんなことが起きてしまって…わたしが空斗くんを殺してしまったのかもしれないって感じるんです。だからわたしはみんなに嫌われても仕方ないんだって…」

「もうやめなさい。これ以上は私が許さない」

教官が私の両肩を強く掴みながらそう言った。

「そんなことはありません、今回のは事故です。どう考えたって希さんのせいではありません。それに兄は希さんの事を心から愛していましたし、私によく希さんの事を話してくれました。それは私の見たことのないとても幸せな兄の姿でした。だから、私は希さんの事が嫌いじゃありません。むしろ感謝をしています。兄を幸せにしてくれてありがとうございます」

玲奈ちゃんはそう言って深々と頭を下げた。

その光景を見てわたしはただただ驚いていた。